令和3年2月15日実施された神奈川県公立高校の学力検査について、社会の問題分析と難易度をいち早くお知らせします。

文中で表記されるA~Cは次のような指標です。

難しい。予想正解率30%未満
高度な考察や思考力が問われる問題
標準。予想正解率30%以上60%未満
原理や原則を問われる問題
簡単。予想正解率60%以上
知識が問われる問題

なお、各設問の表記は

問題番号 解答(例) 難易度

の順で表記します。

問1 世界地理(15点)

(ア) 3 難易度C 
(イ) 2 難易度C 
(ウ) 1 難易度C 
(エ) 大西洋 難易度C 
(オ) 2 難易度B 

難易度分析・解説

どうした神奈川県。
簡単すぎやしませんか?
昨年度はそれ以前に比べてかなりマイルドな調整をされました。
にも関わらず今年度はそれに輪をかけて簡単になりました。

(ア)詩の内容から地域ごとに異なる時間帯を表しているのを読み取る。過去問を解きたおした人からすれば、こんなの時差ですよね?と即解答が可能。
(イ)絶句。なぜ出題されたのでしょう?定期テストでも下手するとでないレベル。
(ウ)ようやく地理らしい問題。とはいえ、二択に持ち込むまでには2秒とかかりません。実質2択問題。ロシアが産油国であることなどはやや細かい知識が必要かもしれませんが、そこまで難しかったとはいえません。
(エ)北アメリカ大陸、ユーラシア大陸の位置と東西の方向が分かればだれでも解ける問題。それらを知らずに入試を受ける人はいるのでしょうか。
(オ)近年よくでる割合問題。「Aに対するBの割合」を「B÷A」できちんと処理できるかどうかがカギです。あとは国の位置を正確に知れているか。とはいえ、アメリカ、中国、ブラジル、アルゼンチンの位置を知らないまま入試を受ける猛者はほぼいないでしょう。

問2 日本地理(15点)

(ア) 3 難易度B 
(イ) 2 難易度C 
(ウ) カルデラ 難易度B 
(エ) 1 難易度C 
(オ) 4 難易度B 

難易度分析・解説

こちらも昨年に比べてかなり易しくなりました。地形図が1ページにドンと構えていたものからスケールダウンしましたね。そして実際の距離・面積を求める問題がなくなりました

(ア)教科書の内容がしっかり入っていれば簡単に取れる部類。そうでなくても「シラス台地」は九州と分かっていれば取れるサービス問題。
(イ)間違えるとしたら「蛇行」を知らなかったくらいでしょうか。
(ウ)定期テストレベル。どうした。
(エ)資料の分析パターン。降水量に情報が限定されているので少し、ほんの少しだけ難しく感じるかもしれません。九州は台風の通り道であることなどは前提の知識でした。
(オ)これも近年お得意の割合パターン。しかし選択肢にひねりがなく、言いかえもなく、ただ書いてあることが正しいか判断すれば正解できます。

問3 江戸時代までの歴史(15点)

(ア) 2 難易度B 
(イ) 3 難易度C 
(ウ) 1 難易度C 
(エ) 6 難易度B 
(オ) 4 難易度C 

難易度分析

できごとの並べ替えがグッと簡単になったのは昨年と同様でした。
目新しいのは(ウ)の問題でしょうか。
系図の見方を聞いてくるのは斬新ですね。

問4 明治以降の歴史(15点)

(ア) 1 難易度C 
(イ) 2 難易度C 
(ウ) 4 難易度B 
(エ)
(i) 満州 難易度C 
(ii) 3 難易度B 

難易度分析

「帝国ホテル」でぎょっとした人もいるかもしれません。が、「開業130年を迎えた」からおおよその年代は特定できるので年号まできっちり覚えていた人からすればサービス問題の嵐でしょう。
ちなみにこの「帝国ホテル」の初代会長は大河ドラマのテーマに抜擢された「渋沢栄一」です。日本の資本主義の父とも言われ、2024年に変更されるお札の1万円に描かれることが決まっています。
そういう意味では時事問題的な扱いを受けているのかもしれません。
とはいえ、消去法を使えば知識がなくてもある程度抵抗できてしまいます。

問5 公民-経済(12点)

(ア) 節分 難易度C 
(イ)
(い) B 難易度C 
(う) アイヌ 難易度C 

(ウ) 4 難易度B 
(エ) 2 難易度C 

難易度分析

(ウ)のみ、少し突っ込んだ知識が必要でした。

問6 公民-政治(15点)

(ア) 2 難易度C 
(イ)
(i) 3 難易度C 
(ii) 3 難易度C 
(ウ) 4 難易度C 
(エ) 1 難易度B 

難易度分析

簡単すぎて逆にめまいがしそうな選択肢のオンパレード。
もはや社会というより国語です。

問7 地・歴・公の融合問題(14点)

(ア) 3 難易度C 
(イ) 4 難易度B 
(ウ) 1 難易度B 
(エ)(i) 内閣から独立 (ii) A 難易度C 

難易度分析

地歴公民の融合問題は今後もデフォルトで登場するのでしょう。
地形図がなくなったかと思いきや、ここで登場。
と思いきや(ア)は目の検査レベル。(イ)はちょっとだけ面白い問題。滋賀県の位置と周辺の環境を考えれば正解は固い。(ウ)中世と近世がいつを指すのか、それをキチンと勉強してきた人へのご褒美。全体を通して差をつけられる唯一の問題。

問題全体の総合的な難易度は

全体を通して難易度Aに評価できる問題はありませんでした。
一言で簡単すぎます。
この問題を通して神奈川県は受検生のどんな力を試したかったのか一切伝わりません。
コロナ禍に巻き込まれた彼らに対しての忖度なんでしょうか。
一定レベルの高校であれば、社会で差がつくことはほぼないでしょう。
ミスが起きる要因もほぼありません。
来年度の入試結果に関する発表や考察が違った意味で楽しみですね。

この記事を書いた人

陌間 和将
山王教室の責任者・国語の教科責任者を担当しています。
日常の授業を通して考える習慣を身につけてもらうべく、様々な仕掛けを凝らして授業をしています。