志願変更期間が終了し、神奈川県公立高校の出願状況、つまり倍率が確定しましたね。その内容は神奈川県のHPに掲載されていますので、そちらをご覧ください。

令和3年度神奈川県公立高等学校入学者選抜一般募集共通選抜等志願変更締切時志願状況

さて、エコール学院がある小田原市は旧県西学区にあたります。旧県西学区は人口も少なく、やれ「人より猿の方が多い」だとか「神奈川の秘境」だとか失礼な物言いに対して何の反論もできなくてぐぬぬとしてしまう地域でもあります。

まあ、学区内に信号がほぼ無い小学校とかもあるくらいですしね。

そんな旧県西学区には7つの高校があります。数年前から嫌な予兆はあったのですが、ついに令和3年度入試では小田原高校、西湘高校以外全ての高校が定員割れを起こしてしまいました

定員割れが起きる理由

実は神奈川県全体を見回しても、これほど定員割れを起こしてしまった地域は他にありません。なぜそのようなことが起こってしまうのか、原因は明らかです。

中学生の数が少ない

県西全体で中学3年生は約2500人しかいません。この生徒数に対し、公立高校の定員は7校で1833人もあるのです。ここに地元の私立高校3校の人数を加えると、明らかに生徒数を超えてしまいます。

一言で言えば供給過多です。

とはいえ、高校は必ずしもその地域の子だけが行くとは限りませんからね。その分の余裕を持った定員だと思えば納得なのですが……

他地域から受検しない

そう、神奈川県は東へ行くことはあっても西へ行くことはありません

県西でも、小田急沿線に住んでいれば秦野や厚木方面を受けるのはざらにありますし、JR沿線なら平塚・藤沢方面も人気です。

でも、逆はありません。わざわざ人が少ない地域に来るほど魅力のある学校が無い、と判断されているからでしょう。実際に良い学校かどうかの問題ではありません。売り出し方の問題です。

ただでさえ定員の枠が多いのに、余所の地域に流出してしまうので、なおさら余るというものです。

私立志向が高まった

それでも上位校は高い人気をキープしています。これらの学校がなぜ人気なのかと言えば、近隣の私立高校より進学実績が良いからです。

裏を返せば、それ以外の学校よりも私立高校の進学実績が良いことを示しています。これは忖度云々をしても仕方ありません。進学実績はただのデータであり、数字からも隠しようのない事実なので。

私立が優位に立つラインがちょうど定員割れを起こしたラインと一致するのは、偶然ではないでしょう。

定員割れが起きるとどうなるか

近所の中学生たちの大半が定員割れになっているという希有な地域になった県西地域ですが、彼らの心の中は「ラッキー」で埋め尽くされているかもしれませんね。そりゃそうでしょうね。

果たして定員割れが起こるとどうなるか。そこにはラッキーでは済まない、将来を大きく左右する問題点があるのです。

確実に受かる

先日の倍率記事でも書きましたが、神奈川県の公立高校入試で定員割れになった場合、確実に合格します

生徒が油断しないように脅しをかける意図で「落とされる可能性もあるんだぞ」という先生がいらっしゃるかもしれませんが、そんな可能性はありません。

現在の入試制度に変更する際に神奈川県が集めたパブリックコメントの回答にて、定員を下回った場合に不合格を出さない、いわゆる「定員内不合格」は無いと明言しています。事実、定員内不合格は出ていません。

このような事実があるため、脅し文句は通用しませんね。賛否はありますが、得点が相当低かろうが内申点があまりに不足していようが、合格はします。

もちろん合格後、学校の授業について行かれるかは全く別の問題です。

モチベーションが下がる

倍率が確定してから実際の入試まで1週間。誰しも「確実に受かる」なんて特急切符をもらってしまったら、その瞬間やる気は地に落ちます

もちろん意識高く勉強を続ける子の方が多いと思いますが、合格できるかどうかのプレッシャーにブーストされた全力全開の受検生と比較したら、同じ1問から吸収するものには天と地の差があります。

たかが1週間かもしれませんが、ギリギリの戦いをしている子の研ぎ澄まされた感覚が可能にする実力爆上げはバカになりません。それが失われるのは本当に勿体ないところですよね。

高校全体のレベルが下がる

定員が割れた場合、高校のレベルは下がります。その学校のレベルに対して大きく成績が不足している子、本来なら入試という関門でふるいにかけられていたはずですが、全員入学できます。

その時点で平均レベルは低下しますが、自分には関係ないと思いますよね?そうもいかないんです。

まず学校の授業ペースやレベルを下げざるをえません。ウチの学校のレベルについてこいよ!とばかりに今まで通り授業を進めてくれる先生ならいいのですが(よくないか)、さすがに先生方はそんな薄情なことはしません。

多少低いレベルであろうが、理解しやすい授業、ついてこられるペース、無理の無い演習課題と、いろいろと試行錯誤をしてくださるでしょう。

その結果、本来のレベルで入学してきた子たちが伸びきれない状況が生まれます。

また、レベルが下がると大学からの評価が下がりますので、今後指定校推薦の枠が減っていくことが予想されます

大学からだけでなく、就職の斡旋も同様ですね。企業からしてみれば能力のある人材が欲しいわけですから、高校の質という面は重要でしょう。

まとめ

受検生本人の責任とは無関係なところで様々な影響が起こる、これが定員割れの功罪です。制度上の問題ですから、生徒たちには何の落ち度も無いのですが。

定員割れを起こした学校へ進学するにあたり、いったい何をすれば良いのか。答えは明確で、今まで以上に勉強をすべきです

推薦枠が減るなら、それをつかみ取るだけの成績を取れば良いわけで、油断している子が多い中ですから、むしろチャンスと捉えて良いでしょう。

高校内の勉強に対して前向きな空気は以前より薄れるでしょう。新入生には以前との比較ができないもんだからなおタチが悪い。

だからこそ、倍率が高い高校より意識を高く持ち、心して入学しなければいけません

ぜひここからの1週間はもちろん、合格を勝ち取ったあとも努力を続けましょう。4月までに周りと大きな差をつけてしまえばその先の高校生活がとてつもなく楽になりますので、むしろ頑張りどころはここからですよ!

この記事を書いた人

富田 靖之
富田 靖之螢田教室・板橋教室責任者
指導歴20年の理系担当講師。
Twitter始めました。ブログは長文、それ以外はTwitterで情報を発信していきますので、よろしくお願いします。