神奈川の公立高校入試まであと1ヶ月少々。多少難易度が落ち着いたとはいえ、まだまだ全国的には難しめな神奈川の理科に苦戦している受検生は少なくないはず。

11月下旬から始まった受験勉強ですが、受検日が異様に早い神奈川の場合、たった3ヶ月間弱の超短期集中なんですよね。

正直前半の1ヶ月なんてまだまだ受検生にはほど遠い意識と勉強の密度です。言ってしまえばノーカウントに近いのではないでしょうか。

だからこそ、まだ1/3も残っているといえます。

むしろ、ここからが本番です。10点とは言わず、20点伸びても何もおかしくありません。

どうしたらここから伸ばしていかれるか、さまざまなレベル帯の子に合わせて解説をしましょう。

神奈川理科で得点を上げたい全ての人に

今回の1番重要なポイントですので、最初に。

理科の苦手分野を攻略しよう!となったとき、多くの人が「基礎的なレベル」として定期テストで使うようなワークを地道に解いてしまいます。

勘違いしてはいけません。それは「基礎」ではなくただ単に「簡単」なだけです。

簡単な問題だけをいくら解いても、基礎は身につきません。

「基礎」とは何か

僕の考えではありますが、「基礎」とは、「知識を活用できる状態まで理解したもの」です。

僕の好きな料理で例えてみましょうか。料理の出来る人はレシピさえ見ればほとんどの料理は作れます。でも、料理が下手な人はレシピを見ても作れません。

その違いは「基礎」なんです。

「タマネギをみじん切りにして」というのは、「タマネギの皮をむいて芯を落とし、半分に切った後縦に2~3mmごとに切り込みを入れ、さらに水平に3~4回切り込みを入れたあと、横に2~3mmごとに刻んでいく」という「基礎」を理解していないと実践できません。

出来る人からすると「みじん切り」で理解できますけど、「基礎」が身についていない人は「どうやって皮をむくの?」からのスタートですからね。

「みじん切り」という言葉は誰でも知っていますが、実際に切り方を理解して使える状態になっていなければ、タマネギはただのざく切りに刻まれてしまいます。

これと同じように、理科の「用語」を暗記していても、それが何を意味しているのか理解していなければ使えない。これが「基礎」です。

「基礎」が分からなければ問題は解けません。学校のテストとは違うのです。

演習のゴールは入試レベルにすること

「基礎」を定着させるには、用語を使うことに慣れる必要があります。

例えば、「塩酸」を入試で使えるようにするには、

・塩酸は塩化水素の水溶液
・酸性
・電離すると水素イオンと塩化物イオンに分かれる
・金属を入れると水素が発生
・白っぽい物質を入れると二酸化炭素が発生
・硫化鉄を入れると硫化水素が発生
・水酸化ナトリウムと組み合わせた中和では水と食塩ができる

最低でもこの程度の知識は必要です。1つの用語とさまざまな知識が結びついて初めて入試に対応できる「基礎」となるんです。

これを身につけるには、「基礎」を活用する問題に慣れる必要があります。一問一答問題ばかり解いていても、これは身につきません。

超自信の無い人が簡単な問題から始めるのは構いません。その場合も、必ず演習のレベルを上げていき、入試レベルの演習をして1つのゴールにして欲しいのです。

そうしないと、せっかくの知識が「基礎」のレベルまで定着しません。

誤解を恐れずに言えば、「基礎」さえ固まれば入試問題なんて怖くありません。教科書に載っていることしか出ない公立高校の入試ですからね。入試問題の演習を通じて、バラバラな知識がつながってくる手応えをつかんで下さい。

理科は分野ごとに攻略する科目

英語や社会と異なり、理科は12の分野が明確に分かれています。もっと細かく見れば、たとえば中1物理は光・音・力の3つに分かれていますね。

これは、自分の苦手な分野がきっちりと特定できるということです。

1週間サイクルで勉強の計画を立てるとき、どの分野を仕上げるか1つか2つに絞りましょう。「1週間で中1から中3までの物理分野を完璧にするぜ!」と意気込んでもムチャですからね。受験科目は5つあるんですから。

だから、分野を絞って、1週間徹底的にその分野に向かい合いましょう

入試問題を最初から最後まで通しておくメリットはほとんどありません。理科は時間が不足するような科目ではありませんからね。

ただし、大問1つあたりの時間は6分以内にしましょう。神奈川の理科は、大問が全部で8つありますから、6×8=48分でギリギリですよ。

目標点別の注意点

ここからは目標点ごとの注意点を簡単に挙げていきたいと思います。

神奈川理科で80点以上を取りたい人の注意点

受検生のプライドを傷つけるようで申し訳ないのですが、80点の壁を越えられない人は、先ほどから言っている「基礎」が固まっていない子が多いですね。

問題をたくさん解けば、その分パターンが蓄積されていくので得点は自ずと上がっていきます。その壁が80点でしょう。

そこから先は「見たことのない問題」を解かなくてはいけません。そこには「基礎」が欠かせないのです。

例えば、中2地学の「海陸風」のしくみは教科書でも説明があるので、暗記している生徒が多いでしょう。

でも、全く同じ仕組みの「季節風」は「夏は南東、冬は北西」のような知識しか無く、原理を考えたことすらない子が多いのが現実です。繰り返しますが全く同じ原理なんですがね。

これが「基礎」の身についていない状態です。

ただ問題を反復しているだけではいけません。解説を重箱の隅をつつくかのように熟読して、少しでも引っかかる点を残さないようにしましょう。

自分で調べに調べ尽くしたり、先生に質問したり、手間を惜しまないことです。

蛇足ですが、賢くなるのに欠かせないのは情報を手に入れる力です。ひたすら受け身なだけのアンテナが鈍い状態ではいつになっても身につきません。自分から情報を求めていかないといけませんよ。

神奈川理科で60点以上を取りたい人の注意点

大問を通して解く練習をする

神奈川県の理科は、前半4問が小問集合、後半4問が大問となっています。

小問集合は難易度もそれなりですし、1問解けなくても次の問題とは関係ないので、しきり直せます。

ところが後半の大問、そうは問屋が卸しません。

まず実験のリード文がめちゃくちゃ長い。丸々1ページが全部実験の説明なんてのが当たり前です。

さらに、1つミスをすると、その後の問題を連鎖的にミスする可能性があります。特に物理や化学がそうですね。

これに対応するには、大問を通して解く練習が欠かせません。

そこで登場するのが「全国入試問題正解」です。全国の高校入試問題を集めた1冊、ここには豊富に大問がそろっています。

分野を絞ってさまざまな県の問題を解いていけば、大問の演習を大量にこなすことが出来ると同時に、よく登場する実験のトレンドや問題パターンも身につきます。

神奈川県の入試に対応した教材は塾専用を始めたくさんありますが、1つの分野で大問をたくさんこなすには、どれも量が不足しすぎです。

高得点を狙うには、「全国入試問題正解」を解き込むことがマストでしょう。

神奈川理科で平均点を取りたい人の注意点

知識を中途半端にしない

暗記をするときは、中途半端に覚えないようにしましょう。

例えば、BTB液の色の変化と酸性・中性・アルカリ性を暗記するとしましょう。でも、これだけではダメで、最低限でもリトマス紙とフェノールフタレインも一緒に覚えるようにすると良いです。

水素を作るのは塩酸+金属と覚えたら、同じように酸素・アンモニア・二酸化炭素の発生方法も一緒に覚えます。

要は、1つ1つの知識を覚えるのでは無く、グループごとまとめて覚えるということです。

生物と化学を狙うべし

比較的得点が伸びやすい生物と化学を狙いましょう。

地学分野は覚えることが大量にある上に、知識だけで解ける問題が意外と少ないのがやっかいです。覚えたものを活用しないと解けない問題が多いんですよね。

物理分野は絶望的です。理科が苦手なんだけど物理だけは得意なんて聞いたことがありません。覚えることは非常に少ないですが、その分応用が利かないと太刀打ちできません。

これらに比べると、生物と化学は知識をそのまま使う問題が多く、ある意味定期テスト感覚で解けてしまいます。もちろん一部例外はありますが、地学・物理に比べればマシですよ。

まとめ

理科は暗記科目です。同時に、暗記した知識を使う科目です。

神奈川の理科は本当に良問揃いですので、ただの知識では太刀打ちできません。

知識を使える状態に鍛え上げた「基礎」を身につけることができれば、残り1ヶ月、ここからでも大きなジャンプアップを果たせるので、寸暇を惜しんで問題に向き合いましょう!

この記事を書いた人

富田 靖之螢田教室・板橋教室責任者
指導歴20年の理系担当講師。
Twitter始めました。ブログは長文、それ以外はTwitterで情報を発信していきますので、よろしくお願いします。