前回の記事からだいぶ間が開いてしまいました。

もはやそんな記事あったの?といわれてもしかたありませんので、前回の記事をリンクしておきます。

国語ってどう勉強すれば良いの? 読解力編

その主な内容は文章などに書いてある内容を正確に理解する方法についての紹介でした。

今回はそうして理解したことを、記述問題で生かすためにどんな練習をしたらいいか述べようと思います。

分かるだけでは不十分 それを正確に伝えられてこそ

現実的なこととして、勉強にはテストがつきものです。国語で例えれば、文章についてどんなに深く、正確に理解していてもそれを適切に記述できなければ「理解が足りていない」と評価を受けてしまいます。

つまり頭の中では、これが答えに違いないと分かっていても、それをその通り、文や言葉にして表現できていなければ、「分かっている」とはいえないということです。

横道にそれますが、これは勉強全般にも言えることです。どんなに頭の中で深く理解した気でいても、うまくその知識を使いこなせなかったならばそれは「分かっている」とはいえません。問題なりレポートなりで人に伝わる状態にしてはじめて「分かっている」と言えるのです。

そのため、テストには必ず記述問題が入りますし、中学校などではレポートの課題が出たりするんですね。

さて正確に伝達するためのトレーニング法を紹介・・・する前に、少しだけ「どうすれば正確に伝わるか」を説明したいと思います。

正確に伝えるために必須なこと

国語に限らず、記述式の問題などで正確な解答を出すには、次の3点が必要です。

①主語と述語が含まれている。

②主語と述語が一致している。

③修飾語が適切な位置についている。

なにやら難しく感じるかもしれませんが、内容としてはとてもシンプルです。

①主語と述語が含まれている

日本語は特に主語を省くことが多い言語です。

特に親子などの親密な間柄では、わざわざ主語を会話の中に入れて話すことの方がまれでしょう。

ですが、書いて伝えるときには主語はほぼ必須です。

小学校の国語授業で習うことでもありますが、書きことばは、少なからず自分について知っている相手と交わす話し言葉とは違い、だれに読まれるか分からないことを前提とします。

言い方を変えれば、誰に読まれても理解されるよう心がけるのが前提なわけです。

そして、国語などの記述問題は当然書きことばで書きますから、正確に情報を伝えるために「誰がーどうする、どんなだ、何だ、ある・ない」が必須なのです。

②主語と述語が一致している

主語と述語が一致していなければ、読む相手に正確な情報は伝わりません。

たとえば「あなたは何の動物を飼っていますか。」という質問に対して「私はイヌです。」のような返事をするケースです。もちろんここで「イヌがしゃべった!?」と驚く人はいないでしょうが、表現としては不正確です。前にも述べたように、国語などの記述問題は誰が見ても正確に情報が伝わることが前提なのでこのような解答は×となります。

①や②に比べ、③についてはそこまで厳格なルールではありません。

③修飾語が適切な位置についている。

これも次のようなたとえを用いてみましょう。

「赤い大きな水玉もようの服」と聞いて、どのような服を想像しますか。

このような書き方では、A「水玉もようで、赤い色をしたサイズの大きい服」やB「大きい水玉もようの入った赤い服」やC「赤くて大きな水玉ももようの入った服」など受け取り方が複数でてしまうのでやはり情報が正確に伝わりません。

もしAのような服であることを伝えたければ、「水玉もようで、赤い大きな服」といったように修飾語を適切な位置に置く必要があります。

細かい事を挙げればキリがありませんが、少なくともこの3点を守ることで正確な表現は可能になるのです。

正確に伝えるためのトレーニング

ようやく本題です。

記述問題で正確な解答を出すためのトレーニングではありますが、その最初にしてもっとも重要な練習方法は「会話」です。

おいおい何言ってんのよと思うかもしれません。ですが、もともと書きことばは話しことばよりも後に身につく後天的なものです。自然と思いつくことばをルールに当てはめて窮屈に表現しなければならないわけですから、ある意味不自然な状態です。ですから、まずは話しことばの段階で書きことばのルールに寄せてそのギャップを埋める必要があるのです。

具体的には「だれが・いつ・どこで・なにを・なぜ・どうやって」を意識して会話をしましょう。

話し始める前に「だれが・いつ・どこで・なにを・なぜ・どうやって」についてあらかじめ考えておくのです。

中学生くらいであれば、自分の力で可能だとは思いますが、場合によっては周囲の協力が必要な場合があります。

一方小学生ではこうした取り組みを自分だけで完結するのはとても難しいと思います。

そうした場合には保護者の方々が日々の会話の中で「だれが・いつ・どこで・なにを・なぜ・どうやって」を盛り込んであげるのが効果的です。

私自身、教室に通っている生徒に対しては次のような実践をしています。

生徒:「先生、今日学校でしかられた。」

私:「へー、だれが?」

生徒:「あ、友達が。」

私:「友達が学校でしかられたのか。それはどうして?」

生徒:「給食のときに休んだ人の分の牛乳を勝手に持って行っちゃったから。」

私:「なるほどね。勝手に牛乳を持って行ったからその友達はしかられたのか。普段はどうやって休んでる人の牛乳を分けるの?」

生徒:「給食を配り終えたら、じゃんけんで勝った人が持って行くの。」

私:「そういうのはいつになっても変わらないんだね。」

といった具合にできるだけ会話の中に「だれが・いつ・どこで・なにを・なぜ・どうやって」を盛り込みます。

その上で生徒の話す内容に不足している「だれが・いつ・どこで・なにを・なぜ・どうやって」を補って、内容をオウム返しします。このオウム返しについてはまたいつか話題に挙げたいと思いますが、普段の何気ない会話の中で書きことばのルールを盛り込むことで、当初は不自然だったルールを自然に近づけていくのです。

その結果、ジワジワではありますが、ある小学生の生徒は「書く問題なんかイヤ、書かない、書き方が分からない、だから解かない。」という状態から、「やるか~(ため息)。」「あ、『だれが』が足りない」といった具合に徐々に記述問題にも対応できるようになってきました。

週一回、会話時間にして数分である程度の効果が出ているのですから、それより会話の頻度の高いご家庭で実践されたらどうなるんでしょう。とはいえ、環境の違いもあるので一概に確実に効果があるとはいえませんが、気楽にできる取り組みですのでぜひ実践してもらえたらと思います。

前置きが長くなりすぎてしまいましたので、その他のトレーニング法は回を分けて紹介したいと思います。

この記事を書いた人

陌間 和将
山王教室の責任者・国語の教科責任者を担当しています。
日常の授業を通して考える習慣を身につけてもらうべく、様々な仕掛けを凝らして授業をしています。